メールサービスを統合したことで、管理・運用工数を大幅に削減
拓殖大学は、1900年に設立した「台湾協会学校」を前身としており、「拓殖」が意味する通り「開拓精神にあふれ、国際社会で真に通じる人材の育成や教育」を行っている。学内における情報システムにおいても時代の趨勢を読んで「半歩」先を行く機器やソフトウェアを導入してきており、今回教員用と職員用メールシステムの更改を実現した。パフォーマンスの向上だけでなく、管理者にとっての管理・運用工数が大幅に削減され、誰でも管理できるメールシステムが稼働を開始した。
将来を見極め半歩先を行く
拓殖大学はこれまで、「拓殖」の精神のもと、広い視野を持ち将来を見据えた展開を行ってきた。情報システムについても同様で、同校は、1972年にメインフレーム「FACOM 230-25」(富士通)を導入した。当時開発されたばかりの中型汎用機で、主記憶装置にICメモリを採用したものであった。
「当校はかなり早い時期に、汎用機を導入しました。導入当時は研究用として利用していたほか、事務処理の効率化などにも活用し、成績管理や入試にも汎用機を利用してきました」と理事 副学長・情報センター長の高橋敏夫商学部教授は語る。
「FACOM 230-25」はもともと研究用途で導入したことから、同校の研究施設で管理・運用されていた。しかし、事務処理で汎用機を活用し始めると、研究施設以外で管理・運用する方法を模索する動きも活発化した結果、「情報センター」を組織化する動きにつながった。情報センターが中心となりコンピュータの管理をその用途から「教育・研究」と「事務処理」の二つに分け、その潮流は今でも脈々と受け継がれている。実は情報センターの発足から今日まで、センター長を長年務めるのは高橋教授である。
「情報システムは、導入してから数年使い続けるため、常に将来を見据えて歩みを進めていきました。ただ、ほかよりも一歩二歩と歩みを進めてしまうと、見誤る可能性もあります。そこで半歩だけ歩みを進めるようにし、常に状況を把握しつつ、将来を見据えたシステムの増強・追加を行ってきました」と高橋教授は語る。
拓殖大学
理事 副学長 情報センター長
商学部 教授
高橋 敏夫氏
属人的な管理では限界
誰もが管理できるメールシステムに
半歩先の発展を志してきた最たる例が1990年代に導入したメールシステムと言える。
このように比較的早い時期にメールシステムを導入した理由として、「海外の提携校などに行った際、メールアドレスを聞かれる教員が増えていました。名刺にメールアドレスがないと困るということで、情報センターでメールサーバーを構築しました。導入後は、これまで郵送で数ヶ月もかかってやり取りしていた情報が、一瞬で相手に届きその日のうちに返事がくるようになったことで、留学担当の教員からは"大変助かった"という声がありました」と高橋教授は振り返る。
当初はメールシステムを自前で構築してきたが、現在は、ディープソフト製の統合メールソリューションDEEPMailにリプレースしている。今回のリプレースでは教員用と事務用ともにDEEPMailを採用した。
「教員用のメールシステムは、複数の技術を複合しているため、管理・運用工数が煩雑になっているという課題がありました。人事異動でメンバーの入れ替えなどがあった際、CLI(コマンドラインインターフェイス)を駆使して管理するこのシステムを運用し続けることはとても難しいと思います。そこで、統一されたWebインターフェースで管理できるシステムを求めていました」と語るのは学務部八王子学務課の岡本慎一郎氏だ。導入当時は、図書館・情報センター事務部に在籍していたが、現在は人事異動になっており、当時の懸念事項がまさに現実のものとなったことになる。
インターフェースの問題であれば、アプライアンス型のメールシステムやそのほかのソフトウェア製品などを利用する方法もある。しかし、コストがかかりすぎたり、特定のサーバーOSでなければ稼働しないなどの理由から、導入に二の足を踏むものが多かった。それらの課題を解決するDEEPMailに白羽の矢が立ったのだ。
また、事務用については「ExpressMailというメールシステムを利用してきました。おそらく10年近くこのメールシステムを利用していると思います。事務系と教員系とで異なるメーカのシステムを運用するのは負荷が大きく、操作や設定など2通り覚えるのもたいへんなので1つにまとめたいという思いはありました」と図書館・情報センター事務部電算課の川戸貴博氏は語る。
拓殖大学では、教員系・事務系を問わず、メールシステムの管理・運用工数が課題となっていたのである。メールシステムにかかわる業務は幅広く、問い合わせも多い。複数のシステムではなく、稼働しているシステムを絞り込む方が管理工数を削減でき、ヘルプデスクなどの業務軽減や安定稼働にもつながっていく。DEEPMailにすることで、同校の課題のほとんどは解決するのだ。
学務部 八王子学務課
岡本 慎一郎氏
メーリングリストなど新たなサービス展開も可能に
データの移行のため、1日ほどメールシステムを停止したが、移行はスムーズに進んだ。途中、軽微なトラブルも起きたが、ディープソフトの迅速なサポートのおかげで、1日程度で収束していったという。
「事務系の場合、メールクライアントソフトから接続していることもあり、移行したからといって大きな変化はありませんね。"パフォーマンスがはやくなった"という人もいますが、ユーザーから見た使い勝手は何も変わっていません。ただ管理面は非常に向上しています。設定などもわかりやすいGUIが用意されているので、戸惑わず管理できます。必要な管理・運用業務はマニュアルを見なくてもできるので非常に助かっていますね」と川戸氏。 拓殖大学は、DEEPMailにスムーズに移行し、管理・運用の工数は大きく減っているようだ。さらに拓殖大学では、DEEPMailの機能を活用し、メーリングリストのサービスも展開しようと考えている。
これまでも拓殖大学では必要に応じてメーリングリストのサービスを行ってきた。しかし、その管理は情報センターが行い、ユーザーの追加・削除なども情報センターがとりまとめて行ってきた。「メーリングリストについては、情報センターが管理するのではなく、開設者が管理した方がスムーズにいく場合が多いと考えています。メンバーの追加・削除についても、開設者が直接行った方が間違いは少ないですし、即座に対応することができるでしょう。DEEPMailの機能を活用すれば、メーリングリストの申請から開設までが簡単にできるようになります。これまで以上にメーリングリストを活用できるようになるでしょう。そのような展開も考えています」と岡本氏は語る。
メーリングリストを活用し、学校側から学生に諸連絡などにも活用できる。また、学会などが開催される場合にもメーリングリストで関係部署と必要な情報を共有することもできるだろう。
また、川戸氏は「フィルタ機能も便利ですね。ゲートウェイにアンチスパムソリューションを入れていますが、抜けてきてしまうスパムメールもあります。そういったメールをDEEPMailでフィルタリングすることもできますから、原因がどこにあるのかわからなくても、とりあえず対策を打てるというのは非常に安心感があります」と語る。
インタビューの最後に、高橋教授は情報システムについて次のように語った。「ICTを使った教育効果や満足度を上げていくのは非常に重要だと考えています。それにはコミュニケーションのシステムが欠かせません。この部分を担う情報センターは非常に重要となります」とのことだ。
DEEPMailは、情報センターの業務軽減や新たなサービスの提供に一役買っている。半歩先を歩き続けてきた拓殖大学に最適なソリューションとして、欠かせないシステムとなりつつある。
図書館・情報センター
事務部電算課
川戸 貴博氏